禅定寺の概要は以下のようなものです。
補陀洛山 禅 定 寺
・山号； 補陀洛山
・宗派； 曹洞宗
・院号； 観音妙智院山
・本尊； 十一面観音菩薩立像
・創建年；(伝)正暦2年(991年)
～長徳元年(995年)
・開基; (伝)僧・平崇(東大寺・別当)
・中興; 月舟禅師
・文化財; 十一面観音菩薩像、
日光・月光菩薩像、
四天王立像(持国天、増長天、
広目天、多聞天)、
文殊菩薩騎獅像、
半跏地蔵菩薩像(以上、重文)
禅定寺文書(125通)(重文))
etc.
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禅定寺のある宇治田原の地は,古来より
禅定寺越えと称して,山城国・宇治より近江の
瀬田又は信楽地方に抜ける間道で特に,平安京
以前にあっては,近江,東海道に通じる交通の
要所であった。
平安時代になって,宇治地方が,藤原氏一族
の別荘地として脚光を浴びるようになる。
それは,10世紀末から11世紀にかけての藤原
道長とくに,その子の頼道の頃からで,平等院
をはじめ白河金色院などで知られるが,
禅定寺の土地はその先駆けであった。
寺伝によれば,禅定寺は,藤原兼家(藤原道長
の父,関白,太政大臣)の帰依により東大寺別当
であった平崇上人により5年の歳月を費やして
創建された。
従って,当初の宗派は華厳宗であった。
ついで長保3年(1001年)に,平崇は杣山(そまやま)[注]を含む田畑一千町歩の宇治田原
の土地をこの寺に施入した。
この禅定寺領は,延久元年(1071年),平等院に寄進され,禅定寺は平等院の末寺になり,
天台宗に改宗した。
寺領を藤原氏の荘園にして実質的に所領の保全を図ったのである。
[注]杣山(そまやま)；寺院の建立や補修のための建設用材確保のために国家や
信者からの寄進や購入により寺院が所持していた山林。
しかし,平安末期になると保護を受けていた藤原氏の力は衰え,鎌倉時代から室町,戦国時代
になって衰微した。
近世に入り,江戸時代の延宝8年(1680年)に加賀・大乗寺の中興である月舟宗胡を迎え,加賀藩の家老・本多安房守政長の援助を得て再興している。
これ以来,宗派を曹洞宗に改め現在に至っている。
<参考資料>① Wikipedia；「禅定寺(宇治田原町)」
② パンフレット；山城の国随一・禅定寺観音縁起(禅定寺)
鎌倉時代から室町,戦国時代になって創建当初の伽藍は焼失。
現在,境内には山門,正面に本堂,その右手に観音堂,十八善神堂,地蔵堂.
左手に庫裏, 山門前の左手に宝物館(収蔵庫)がある。
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JR宇治駅から京阪宇治バスに乗り終点の維中前で下車。
ここから更にタクシ－で目的地, 禅定寺へ向かいました。
タクシ－は長閑な山里の曲がりくねった府道783号を走り, しばらくして「禅定寺」の大きな看板の
近くで停車。
見渡すと, 山際の小高い丘まで長い石段が続いていて, その中間に小さな門が見えます。
この小さな門をくぐり石段を登りきったところに山門がありました。
画像をクリックすると大画面でご覧になれます(以下,同様。)
山門に至る長い石段 |
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山 門 |
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花頭窓 |
八脚門の左右は禅宗様式の花頭窓です。
その奥にはお寺のガ－ドマン, 仁王さんが正面を向き,手前の壁には大きなわらじが
掛けてあります。
山門をくぐると, すぐ前に立派な五輪塔が立っています。,
説明板によると, 南北朝時代の干支「康永壬午12月4日」と刻まれており, 干支から1342年のものだ
そうだ。
禅定寺五輪塔 |
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正面には葦(よし)葺きの本堂てす。(↓)
いかにも, 山里の隠れ古寺といった風情ですね。
軒下にはお寺の幔幕(まんまく)が掛けられていますが,よく見ると二つの紋(右拡大写真)があります。
曹洞宗では永平寺(福井)と総持寺(横浜)の二つの本山があり,これらは両寺の紋とのことです。
手水舎で清めて,受付で拝観の手続をして本堂へ上りました。
本堂の廊下を裏手に進むと,大きな壁画が見えます。
平成の大涅槃図(平成11年完成,横45 m × 縦8 m)(↓)だそうです。
本堂のすぐ隣は観音堂です。
もとは重文の十一面観音菩薩が安置されていたが,今は他の重文の仏像とともに宝物館へ遷されて
います。
残された諸仏,地蔵菩薩坐像,大日如来や薬師如来などが観音堂を守っているようでした。
観音堂 |
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観音堂の扁額 |
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外に出て,境内を散策。
白いモクレンの花が青空に映えています。
他にも低木の変わったはなびらの純白の花が咲いています。 何と言う花でしょうか?
住職さんに聞くと, シデコブシとのことでした。
モクレン |
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シデコブシ |
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庭の池には小橋が架かり,その先には鐘楼や四阿[注]が。
[注]四阿(しあ,あずまや)；庭園などに休憩などの目的で設けれた四方に軒を下ろした簡素な建屋。
境内の景色です。
宝 物 館 |
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もう一組の拝観者と共に宝物館に案内され,いよいよ十一面観音さんとの
対面です。
中に入ると仏像群が整然と並んでいます。
正面の丈のある十一面観音菩薩立像を前にして,住職さんからお寺の歴史や
仏像について説明を受けました。
画像をクリックすると大画面でご覧になれます
月光菩薩像(重文) |
平安時代, 207.9cm
木像彩色 |
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十一面観音菩薩立像(重文) |
平安時代, 286.3cm, 木像漆箔
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日光菩薩像(重文) |
平安時代, 203.0cm
木像彩色 |
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本尊の十一面観音像は,当初,文殊,虚空菩薩像と三尊を構成していたそうですが, 現在の脇侍は
日光,月光菩薩像です。これらの二像は近くのお寺から移されたとみられています。
地蔵菩薩半跏像(重文) |
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地蔵菩薩半跏像(重文)
平安時代
像高 87.9 cm
木像彩色
岩上に,半跏の姿勢でゆったりと
坐す地蔵菩薩。
童子を思わせる優しさが感じら
れる。
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文殊菩薩騎獅像(重文)
平安時代
像高 57.3 cm
木像(桜材)彩色
獅子に乗り,経巻と剣を執って右脚を
踏み下げる。
大きな口を開く獅子もゆったりと
している。
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四天王立像
広目天像(重文)
平安時代
像高 156 cm
一木像彩色
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四天王立像
持国天像(重文)
平安時代
像高 156 cm
一木像彩色 |
[注]仏像写真は「南山城の古寺(第3版)」(㈱飛鳥園)から転載。
他の四天王立像は,増長天(平安時代,像高 163 cm,一木造彩色), 多聞天(平安時代,
像高 163 cm,一木造彩色)でした。
四天王像は,本来,手に剣,宝塔,金剛棒などを持っていますが,今は失われてありませんでした。
大威徳明王像(平安時代,像高 60 cm,一木造)は,本来は牛に乗るそうですが,今は“象”に乗って
いました。
“象”に乗るのは本来,普賢菩薩ですが,失われて今はありません。
1,000年の年月が立ちますが,幾多の戦乱や災害をくぐり抜け,よくぞここまで生き残ってきたもの
ですネ。
仏像の保存状態も良かったです。
正午前に拝観を終え禅定寺を後にしました。
最後に,禅定寺境内から眺めた山里の景色をどうぞ。
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